無症候性脳腫瘍治療の考え方
近年、脳ドック等の普及に伴い、症状をお持ちでない時期に脳腫瘍が見つかる例(無症候性脳腫瘍)が増えてきていますが、こういった無症候性脳腫瘍の場合、手術を行うタイミングの設定に悩むことが多いかと思います。
結論から言いますと、私見としては、ほとんどの場合ですぐに治療介入を行う必要は無いと考えています。
脳腫瘍の多くは、発生場所、MRIやCTなどの画像所見、増大パターンなどに特徴があるため、術前にかなりの精度で診断が可能です。こういった画像診断・臨床診断は、手術により判明する病理診断に比べれて100%正確とは言えませんが、例えば髄膜腫や神経鞘腫、下垂体腺腫等の良性腫瘍は、術前に正確な診断をし易い腫瘍と言えるでしょう。画像診断で良性腫瘍である確率が高まった場合には、まず経過観察を行い、定期的(6か月~1年ごと)にMRIを撮影し、増大傾向を確認します。
例外的に、早期に治療介入を行うべき状況は、下記のような特殊な場合となります。
- 悪性腫瘍の疑いが晴れない
- 脳脊髄液の流出路を閉塞ないしは狭窄させることにより水頭症が生じている
- 視神経管内進展の恐れがある前頭蓋底腫瘍
- 増大することで治療リスクが極めて上昇する、治療困難になる
- 採血上、ホルモン過剰産生が疑われる
- 定期検査に来ることが困難など、その他個別の事情がある
担当医の考えによっては、こういった状況でなくとも手術を勧められることがあるかも知れませんが、方針に対して納得できない場合には、セカンドオピニオンも含めて他の脳神経外科専門医に話を聞いてみることも大切だと考えています。